「リプリーズ・ゲーム」 マルコヴィッチのトム・リプリー






パトリシア・ハイスミスの小説「アメリカの友人」の2度めの映画化作品(最初の映画化はヴィム・ヴェンダース監督、デニス・ホッパー主演。タイトルは原作と同名)。日本未公開作品。

犯罪を重ねて生きてきたトム・リプリー(ジョン・マルコヴィッチ)もすでに初老の歳に差し掛かり、イタリアで若く美しい妻と豊かで平穏な生活を過ごしていた。ある日昔の犯罪者仲間リーヴス(レイ・ウィンストン)が訪ねてきて敵対勢力の幹部の暗殺を依頼する。現役を退いていたトムは断ったが足のつきにくい素人を殺し屋に仕立てる「ゲーム」を思いつく。即席暗殺者の対象に選ばれた人物は近隣に住む額縁職人のジョナサン(ダグレイ・スコット)。彼は以前にリプリーを侮辱してリプリーの怒りを買っていたため目を付けられたのだった。ジョナサンは病気で命が尽きかけており、妻子のために多額の金を残せると考え殺しの依頼を引き受ける。
「仕事」は見事に成功し気を良くしたリーヴスはリプリーの静止を無視してさらにジョナサンに仕事を押し付けるが、2度めの仕事は上手くいかずジョナサンは窮地に立たされてしまう。逃げ場のない彼を救ったのは突如現れたリプリーだった…。

主人公のトム・リプリーは「太陽がいっぱい」でアラン・ドロンが演じたあのリプリーである。「最後に警察に捕まったのに。出所したの?」という疑問があるかもしれないが、あの結末は映画オリジナル。原作のリプリーはまんまと逃げおおせてしまう。原作に忠実に再映画化したのがマット・デイモンの「リプリー」というワケ。原作のリプリーシリーズは5作あり本作はその一本。

本作はジョン・マルコヴィッチが大変素晴らしい。知的で優雅でやたらと強い。そしてためらいもなく人を殺す。価値観・行動基準が独特で不可解な人物だがマルコヴィッチの演技はそんなリプリーのキャラクターに妙な説得力を与えている。結婚しているが深層心理で同性愛的傾向があるのはジョナサンとの間に芽生える友情描写に見て取れる。

監督は絶望的なまでにイカれた映画「愛の嵐」のリリアーナ・カヴァーニ。本作はマトモなサスペンスだがヨーロッパ映画だけあって陰鬱で淀んだ雰囲気。米・伊・英の合作なので一応アメリカ資本が入ってるけどね。

サントラはモリコーネ大先生。ラストの曲が良い。後半で映画「ミスト」の曲が流れてビックリした。霧と共に怪獣どもが攻めてくるかと思ったぞ。調べてみたらリサ・ジェラルドの「The Host Of Seraphim」という曲でミストのサントラではなく既成曲だったのね。本作の方がミストより公開は5年早い。ダラボン監督はこの映画を見たのかな。

吹替はソフト版のみ。池田勝がマルコヴィッチに勝るとも劣らない名演技。サンライズロボアニメの常連で剛毅なオッサンや粗野なオヤジの印象が強いがこんな気品のある演技もできるのかと驚かされた。池田ファン必見。
共演の小山力也もタフガイイメージを封印、弱々しい悲しい男ジョナサンを好演している。


監督 リリアーナ・カヴァーニ

ジョン・マルコヴィッチ(池田勝)/ ダグレイ・スコット(小山力也)/ レイ・ウィンストン (小川隆市)/レナ・ヘディ (相沢恵子)







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