南部の架空の町「デラノ」を舞台に三代に渡る警察署長の姿を描いた大作ドラマミニシリーズ。1983年作品。原作はスチュアート・ウッズのベストセラー小説。
物語は町の有力者ヒュー・ホームズ(チャールトン・ヘストン)の視点で進行、彼のナレーションは当時を回顧する形になっている。
■第一部 「事件発生編 少年・なぞの死」
1924年、新興自治体デラノ市は警察署の初代署長に元農夫ウィル・ヘンリー・リー(ウェイン・ロジャース)を任命する。彼は不慣れな業務と人間の暗黒面と向き合わなければならない立場に苦悩するが彼の誠実な仕事振りは地元住民の支持を得ていた。ある日、半裸の少年の死体が発見される。検死医は精神異常者による殺人と断定。ウィルは懸命な捜査の結果ついに犯人を突き止めるが…。
■第ニ部 「展開編 死のゲーム」
第二次世界大戦が終わりデラノに戦争の英雄が二人戻ってきた。一人はウィルの息子ビリー・リー中佐(スティーヴン・コリンズ)、もう一人はサニー・バッツ曹長(ブラッド・デイヴィス)。弁護士のビリーはホームズの後ろ盾で政界を目指し、バッツは警察の巡査に任命され署長の急死により新任の署長となる。だが邪悪な人格のバッツは数々の問題をおこし、ついに黒人の自動車整備工マーシャル(ダニー・グローヴァー)を殺してしまう。苦境に陥ったサニーは初代リー署長の残した捜査資料から殺人鬼の正体をつきとめ、形勢逆転を狙って犯人の逮捕に赴く…。
■第三部 「事件解決編 暴かれたなぞ」
1962年。ビリー・リーは副知事に昇進していた。知事の地位を狙うビリーは政治的効果を期待してMPの退役軍人タイラー・ワッツ少佐(ビリー・ディー・ウィリアムズ)をデラノ初、南部初めての黒人署長に任命する。だがタイラーにはある秘密があった。
日本では1985年にNHKで三夜連続放送され、その面白さに衝撃を受けた人も多いと思う。かく言うアタシもその一人。とにかく凄い傑作でございます。
警察活動と人間ドラマ、殺人鬼との対決、KKK・終戦直後・公民権運動など当時のアメリカ社会の描写とのブレンドが絶妙。4時間半がアッという間に過ぎる。警官(ポリス)と保安官(シェリフ)は立場的に揉めることが多いということは本作ではじめて知った。
国内でのソフトリリースは現在ビデオのみ、再放送も稀で(CSではあったようだが)再視聴が難しい本作。そこで皆原作本に走るわけで。原作も大変面白い。ウッズの処女作だそうで今も再版を重ねている。ラストは断然ドラマ版の方が良いが。原作はホームズの死を予感させて終わるがドラマ版は「あのふたり」が友情を取り戻す場面でジ・エンド。当時子供だった自分は物凄く感動した。ラストの「ふたり」の会話は吹替版オリジナル。原語版のあのシーンは台詞ナシ。
ウッズの小説「草の根」はビリー・リーの孫ウィル・リーが主人公。「湖底の家」は三部で活躍する新聞記者ジョン・ハウエルが主人公のホラー小説。どちらもなかなか面白い。
佐々木譲の小説「警官の血」は本作の影響を受けていると御本人も認めている。荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」も恐らく影響を受けているんじゃないかな。代替わりする主人公、街に潜む殺人鬼との対決などよく似てる。
マイケル・スモールのサウンドトラックも傑作。スモールは有名作の劇伴をかなり手がけている人だが自分は全然印象が残ってない。本作だけ突出して良い。CDは残念ながら出てないようだ。
キャスト・キャラ・吹替に関してつらつらと。
マッチョな印象が強いヘストンがこのような役を演じるのは珍しい。銀行家、政治家、優れた調停者として強い印象を残す。小林昭二の吹替が見事。本作ではFIXの納谷悟朗を外したのは正解だった。知的イメージが納屋より良く出てる。
ウィル・ヘンリー・リーをアテた山本圭の声は渋くて格好良い。吹替の仕事は残念ながらあまり多くない。「ディア・ハンター」のデニーロが代表作かな。
父親同様誠実な人物ビリー・リー。ケネディ大統領はジョンソン副大統領を首にして彼を後釜に据えるつもりだったという設定になっている。「大統領になるべき人」と描写されているが、結局夢は潰える事が示唆されている(ケネディから「ダラスの遊説後に会おう」と言われたが、暗殺によりこの約束は果たされずに終わる)。モデルはカーター大統領だそうだ。
サニー・バッツ役のブラッド・デイヴィスは「ミッドナイト・エクスプレス」で有名。本作では頭のイカレた極悪人の役。原作ではもっと悪辣だけどね。テレビドラマ「ルーツ」では善人役だったのだが。背がえらく低くて女より小さい。デイヴィスはエイズで早逝した。当時は治療法がなかったんだよなぁ。
タイラー・ワッツ役はランド・カルリシアン男爵ことビリー・ディー・ウィリアムズ。自分は本作と「ナイトホークス」の彼がお気に入り。「ファンボーイズ」で久しぶりに顔を見た。
名脇役ポール・ソルヴィノは金田龍之介が声を担当。本職の声優さん同様の見事な演技で驚く。
売れる前のダニー・グローヴァーが被害者役で出演。ジョン・グッドマンは警官役。チョイ役だけどね。
原作者のウッズがポープFBI統括捜査官役で出ている。出たがりな人なのかな。
ルーズベルト議員、後のルーズベルト大統領がデラノにやってくるエピソードがある。デラノという町の名前は彼のミドルネームから取られている。
日下武史、田島令子、小山茉美、橋爪功、樋浦勉、石田太郎と脇の声も豪華。吹替の黄金時代ですな。
DVDは現在のところ何故かイギリス版のみ。DVDや再放送は短縮版でノーカット版は封印状態らしい。マスターが紛失でもしたのかな。90分x3でノーカットの尺は270分のはずだがIMDbのデータは283分になっている。国内版ソフトはにっかつから3本組で出ていた。吹替付Blu-rayの発売を切に望む。
※2017年8月9日追記
「警察署長DVD-BOX」のリリース決定!!
なンと日本語吹替収録!!
こりゃ素晴らしい!!
ヒャッハー!!
監督 ジェリー・ロンドン
チャールトン・ヘストン:ヒュー・ホームズ (小林昭二)
ウェイン・ロジャース:ウィル・ヘンリー・リー (山本圭)
テス・ハーパー:キャリー・リー (萩尾みどり/吉野由樹子)
スティーヴン・コリンズ:ビリー・リー (天田俊明)
ヴィクトリア・テナント:パトリシア・リー (田島令子)
キャスリン・ドローイング:エリー・リー (小山茉美)
ブラッド・デイヴィス:サニー・バッツ (野沢那智)
ビリー・ディー・ウィリアムズ:タイラー・ワッツ (横内正)
ポーラ・ケリー:リズ・ワッツ (比島愛子)
ポール・ソルヴィノ:スキーター・ウィリス (金田龍之介)
マイケル・ダレル:ジョン・ハウエル (橋爪功)
キース・キャラダイン:フォクシー・ファンダーバーク (日下武史)
レイン・スミス:ホス・スペンス (池田勝)
レオ・バーメスター:エメット・スペンス (飯塚正三)
ノーマン・マトロック:ジェシー・コール (石田弦太郎)
ノヴェラ・ネルソン:ネリー・コール (大方斐沙子)
ダニー・グローヴァー:マーシャル・ピータース (樋浦勉)
ゲイル・グレイト:アニー・ピーターズ (駒塚祐子)
ウォーレス・ウイルキンソン:マントン医師 (阪脩)
ダニー・ネルソン:ソウルズ医師 (矢田稔)
ジョン・グッドマン:タブ・マリ (増岡弘)
スチュアート・ウッズ:ポープFBI統括捜査官 (北原義郎)
?:フランクリン・ルーズベルト (大木民夫)
池田秀一/肝付兼太/鈴置洋孝/菊池英博/杉田俊哉/松村康夫/青野武/宮川洋一/富山敬/糸博/上田敏也/屋良有作/天地麦人/千田光男(ノンクレジット)
左上のコマの人が原作者のスチュアート・ウッズさん。FBI役で出演
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