今回はゴッドファーザーの別編集バージョンについて。
ゴッドファーザー テレビ完全版(サガ版)
原題は「THE GODFATHER: THE COMPLETE NOVEL FOR TELEVISION」。製作・公開は1977年。NBCTVで放送されたテレビ向けバージョン。ⅠとⅡを年代順に再構成、劇場版ではカットされたエピソードを1時間ほど追加、性表現・暴力描写は放送コードを考慮しカットされている。
全4話。オープニングが4種類、予告編が3種ある。日本では1987年に深夜帯で「ゴッドファーザー・サガ」の邦題で字幕版が初放映、1994年に吹替版が放送された。2014年にCSでHD版が放送される際にコッポラ監督の意向で邦題が「テレビ完全版」にあらためられた。
アメリカでは削除されたシーンを復活させた「ゴッドファーザー・コンプリート・エピック」版がビデオで発売されたそうだ。
放送コード以外にも「病棟で歌うビト少年」「アンソニーの聖餐式」などいくつかのエピソードがカットされているのは減点材料。完全版の表記は誤解を生むので個人的には副題を変えないほうが良かったと思う。後述の「特別完全版」があれば見る必要はなさそうに思えるが、このバージョンでしか視聴出来ない映像もいくつかある。
まずオープニングでは他のバージョンにはない映像がちらほら。
湖畔のコルレオーネ邸(PARTⅢのオープニングに流用されている)、コニーとくつろぐマイケル、コニーと散歩するマイケル、タバコを吸うマイケル(Ⅱのラストシーンの別テイクと推察)の映像はサガ版のみ。
「アンソニーの聖餐式」の代わりに「湖畔で犬と戯れるマイケル」のシーンが挿入されている。このシーンは特別完全版では未使用。日没による光と影のコントラストが美しい。
テレビ東京で放送された吹替版は尺の問題で再放送が困難なため極めて再視聴が難しい。現在国内ではソフト化されてない。
マーロン・ブランドは麦人(吹替版全4種のうち3作でビトを担当)、パチーノは珍しく山寺宏一、デニーロは何と大塚芳忠。ぜひ一度見てみたい。恐らくノーカット吹替ではないと思うが。
ゴッドファーザー 特別完全版
PARTⅢの公開に合わせて製作された再編集版。原題は「THE GODFATHER: THE EPIC 1901-1959」。年代順構成、未使用シーン追加などサガ版が基礎になっているが、こちらはカット無し。同じ場面でも別テイクが使用されているシーンも有る。自分はこのバージョンが決定版だと思っている。LD-BOX版は随分見たもんだ。追加シーンを幾つか上げる。
ビトたちが訪ねた工員の息子がフルートの演奏を披露。少年の名前はカーマイン・コッポラ。後に音楽家になりコッポラ監督の父親になる人物。このエピソードはコッポラ監督の祖父の家にマフィアがやってきた時の実話が元になっている。
クレメンザが拾ってきた若者ハイマン・スチャウスキーにビトが「ロス」の名前をつけてやる。
ソニーの娘フランチェスカがマイケルに結婚の許可を貰いに来る。前作でビトが結婚式の際に来客の頼み事を聞いていたシーンとの対比になっている。
ラストシーン。ロウソクに火を灯し祈るケイ。自分はこの場面は蛇足だと思う。マイケルの子を堕胎し離婚したケイの心情を考えると、この行動はありえない。このシーンは恐らくPARTⅠの未使用フッテージかと。原作の結末と同じなので。
現在のところBD・DVDは未発売。ゴッドファーザーはスタンダード撮影なのでBD・DVDは画面上下を削ってビスタ化されている。トリミングする分情報は減るのでコッポラ監督もスタンダードサイズには未練があったようだ。スタンダード収録のアナログソフトは今となっては貴重。LDやビデオをお持ちの方は処分する前に少し考えていただきたい。
監督 フランシス・フォード・コッポラ
マーロン・ブランド(麦人)/ アル・パチーノ(山寺宏一)/ロバート・デ・ニーロ(大塚芳忠) サガ版のキャスト。特別完全版は吹替なし

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