「13日の金曜日(1980年版)」 クリスタル・レイクへようこそ
殺人鬼ホラーのフォーマットを確立した記念すべき作品。「悪魔のいけにえ」、「ハロウィン」に続き本作で80年代以降のスラッシャー映画の方向性は決定されたと言える。
傑作かと問われると答えに困るが面白い作品だと思う。安っぽい作り・撮影がかえってリアリテイを生んでいたのは「悪魔のいけにえ」と同様。展開はかなりアレだけど。何の伏線もなく出現したオバさんが真犯人などというアホな脚本は普通は却下されそうなものだが。
悪魔のいけにえ、ハロウィンとの決定的違いは「特殊メイクによる惨殺シーンは観客を呼べる」という事実を発見したこと。あの2作は直接的描写はなかったが本作以降は飛び散る血しぶきの量が競われるようになった。
本作の成功はハリー・マンフレディーニのサントラの貢献が大きい。不安感・緊張感を煽るあのメロディはインパクト絶大だった。エンディングはとても美しい。低予算作品に映画史に残る傑作劇伴が提供された幸運は「ロッキー」や「ターミネーター」と同じだな。
ラストのジェイソン出現を幼少時に初めて見た時は本当に驚いた。公開当時の観客の反応も凄かったそうだ。あの驚かしは「キャリー」で先にやってるけど本作のほうが効果的かも。
製作・脚本のショーン・S・カニンガムも本作がここまで成功するとは思わなかったはず。本作の制作当時は資金もなくて広告で出資者を募った。文面は
「「鮮血の美学」のプロデューサーが世界一怖い映画を撮ります!タイトルは「13日の金曜日」!」
13金のタイトルは別の企画会議の時に適当に付けた仮題だったそうで、その仮題がずっと頭に残っていたとか。ツイてたのは誰も「13日の金曜日」を登録していた人間がいなかった事。タイトルひとつで資金が集まったそうな。
それとカニンガムは特殊メイクに関する知識がなかったのでジョージ・A・ロメロに電話して「ゾンビ」の特殊メイクを担当したトム・サビーニを紹介してもらった。「現場に来た当時のサビーニはイキの良い若者で本作の脚本を読んで大興奮していた。本作のヒットは特殊メイクの存在が観客にあまり知られていなかった事が理由のひとつだと思う」と語っている。
テレビ放送時の吹替はブルーレイに収録されていて今でも気軽に楽しめるのは有難い。アニメ系の声優が揃っているが来宮良子と千葉耕市は別格の存在感。ボーヒーズ夫人役の来宮氏の声質は一度聞いたら忘れられない。「演歌の花道」や「地獄先生ぬ~べ~」のナレーションが懐かしい。残念ながら2013年に亡くなっている。千葉氏はホラー映画の吹替及びホラー映画の予告のナレーションでお馴染み。一番有名なのは「ロッキー」のトレーナー・ミッキーの吹替か。
監督 ショーン・S・カニンガム
ベッツィ・パルマー(来宮良子)/エイドリアン・キング(小山茉美)/ハリー・クロスビー(曽我部和恭)/マーク・ネルソン(古川登志夫)/ケヴィン・ベーコン(村山明)/ピーター・ブローワー(富山敬)/ウォルト・ゴーニー(千葉耕市)
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