ウンベルト・エーコが亡くなった。氏はイタリアが誇る知の巨人だが一般のイメージは”小説「薔薇の名前」を書いた人”だと思う。
本書が出版当時話題になっていた頃に読んだことがあるが自分の頭のレベルでは難解過ぎてさっぱり理解できなかった。しかし映画版の方はオイラのようなお粗末な脳ミソでも理解できるエンタメ作品に仕上がっていた。
本作をゲージツ映画ではなくエンタメ映画にしたプロデューサーの判断は正直偉いと思う。欧州の映画だし原作は偉大だしで普通は小難しい映画にしそうなものだけど。
中世暗黒時代のキリスト教修道院で横溝正史的連続殺人事件が発生。ショーン・コネリーが演じる修道士探偵が謎に挑むが本当のところプロットは案外ショボい。謎解きや動機は大したことないし。キリスト教を批判的に描いてるのは個人的に好感が持てるが。
本作の成功は美術と今は亡きジェームズ・ホーナーの傑作サウンドトラックの功績が大きいと思える。エンドロールでかかるメインタイトルはホーナーの傑作のひとつ。
出演陣はコネリーと子役時代のクリスチャン・スレーター以外にも味のある俳優が多数出演。
日和見的修道院長役に「ジャッカルの日」のルベル警視ことミシェル・ロンスダール。
特殊メイクなしでも異形の役ができる怪優ロン・パールマン。
実在した異端審問官ベルナール・ギーに「アマデウス」のF・マーリー・エイブラハム。史実のギーは天寿を全うしているが本作では民衆にぶっ殺される勧善懲悪。
盲目の長老ホルヘ役にフェオドール・シャリアピン・ジュニア。アルジェントの「インフェルノ」でおんなじような役をやってた年寄りだ。不具で建物の秘密を知っていて真相に迫る者を毒で殺す点が共通している。インフェルノを意識して起用されたのかもね。
blu-rayは程よいフィルム感が残っていてなかなか好ましい画質。場面によって画質にバラツキがあるけど。
DVDも同様らしいがラストに出てくる「汝のバラは名もなきバラ」のテロップが削除されているのは納得いかん。LDでは収録されていたのに。
現在のところ吹替は日曜洋画劇場放映版のみ。ソフトには収録されてない。声優は豪華だがカットが酷くてオリジナル版とはほとんど別物。完全版の収録をお願いしたいがコネリー役の石田太郎、シャリアピン・ジュニアをアテた大塚周夫は鬼籍に入ってしまったので同一キャステイングは不可能である。
監督 ジャン=ジャック・アノー
ショーン・コネリー(石田太郎)/クリスチャン・スレーター(草尾毅)/F・マーリー・エイブラハム(津嘉山正種)/フェオドール・シャリアピン・ジュニア(大塚周夫)
「犬神家のたたりじゃあ」
かってはフランス一の名刑事だったが本作では役立たず。ルベル警視…
「私の名はヴァレリ。建築家である」
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