サスペンス映画の古典的名作だがワタシ的には微妙だった作品。
主人公の犯行プロセスがズサンで雑で行き当たり場当たり。あのやり方で足がつかないほうがおかしい。指紋にも全然気を使ってないし。
加害者も被害者も嫌なヤツなので感情移入できない。さっさと捕まっちまえと思えてしまいハラハラしない。
ラスト、主人公のトムに因果応報の鉄槌が下るのは痛快だが。作品構成はそれを狙っているのかな。
ニーノ・ロータのサントラはシンプルな旋律ながらスンバラシイ出来。これは映画史に残るわな。ロータの作品は本作と「ゴッドファーザーPARTⅡ」の「移民のテーマ」が特に好きだ。
自分はドロンにある意味特別な思い入れがある。60~70年代のドロンは美男子の代名詞で自分も御本人の顔を知るだいぶ前からそう思っていた。何故か。手塚先生の「ブラック・ジャック」にやたらとハンサムの象徴として名前が出てたからだ。
ドロンという人は世界一のハンサムと刷り込まれていたが、実際に見た印象は期待値が高すぎたせいか思った程でもなかった。
マックイーンやイーストウッドの方がハンサムに思えたのはワタシが男だからか。
パトリシア・ハイスミスの原作に忠実に再映画化したのがマット・デイモンの「リプリー」。面白いかどうかは別として出来自体は悪くない。
こっちのトムはドロンのようなハンサム顔ではなく猿顔である。嫌なヤツというより不快でキモくて苛々するキャラクター。
ラストの後味の悪さは特筆モノ。トムは最後に逃げ延びちまうんだけどね。ドロン版はスカッとするがデイモン版はイヤーな気分になること請け合い。
初老のトム・リプリーを描いた「リプリーズ・ゲーム」は中々の逸品で自分のお気に入り。トムを演じるのは何とジョン・マルコビッチ。ハゲたおっさんのトムだがこれが格好良いんだな。音楽はエンニオ・モリコーネ。
吹替はウィキによると6種類もある。松橋登版は見てみたい。石立鉄男のドロンは想像もできん。あのべらんめえ口調で喋るのだろうか。
最近スター・チャンネルで本作の新録版吹替が製作されて話題になった。ドロンは中村悠一、ロネが鈴村健一、マリー・ラフォレが遠藤綾、刑事がてらそままさき。
中村氏のドロンは爽やかすぎてあまり合わんかなー。野心家の悪党役なのでもっとねちっこくて腹に一物ある感じの声のほうが良いかと。
鈴村氏もチト軽い。遠藤氏とてらそま氏は適役。
BSジャパン製作の「タワーリング・インフェルノ吹替版」もそうだったが旧作の新規吹替がニュースになるぐらい珍しい事になってしまった現状は悲しい物がある。
テレビ洋画劇場全盛の頃は放送局ごとに吹替が違い、その差を楽しんだ。DVD黎明期は旧作の新規吹替は普通の事だった。
今は旧作の新規吹替は希少の上、吹替黄金時代の頃の声優さんも訃報が相次いでいる。
年寄りの愚痴と言われれば一言もないが旧作の吹替をもうちょっと考慮して頂けると嬉しい。
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