「真田幸村の謀略」 家康VS真田十勇士

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「柳生一族の陰謀」の大ヒットに気を良くした東映が柳の下のどじょうを狙って制作した大作時代劇。
出来栄えは「柳生一族」とは比べるのもおこがましい大怪作に仕上がってしまいました。
監督は中島貞夫。この人のデビュー作はやはり真田幸村を扱った「くノ一忍法」で、アレもヤクをやりながら演出したのかと疑いたくなる珍作だったな。

謎の妖星が家康在住の駿河城上空を通過して大地に激突するという開幕からして完全に狂ってる。
フィルムの掛け違いかウルトラマン第一話が始まったかと思いきや、隕石の中に居たのはウルトラマンでもベムラーでもなく宇宙人「猿飛佐助(あおい輝彦)」であった。
本作の佐助は外宇宙から来たエイリアンで超能力を使うという設定。その設定が脚本に全然生かされてないのが何とも。

徳川家康(萬屋錦之介)は豊臣家抹殺を画策。手始めに加藤清正(丹波哲郎)と九度山蟄居中の真田昌幸(片岡千恵蔵)を暗殺する。
ギトギトメイクの錦之介家康は本作で一番のインパクト。極悪非道ぶりが大変素晴らしいっす。
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徳川家康(萬屋錦之介)。石田三成の頭蓋骨で作った盃を見て御満悦。
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真田幸村(松方弘樹)


父を殺された真田幸村(松方弘樹)は復讐を決意。
正攻法では勝ち目がないので「草の者」を結集して家康を暗殺しようと計画。
タイトルは謀略となっているが、真田一味の攻撃は力押しばかりで謀略とは無縁ですけどね。

前半部の十勇士集めのくだりは演出・脚本ともにグダグダで正直退屈。
なおメンバーは

 猿飛佐助 あおい輝彦
 霧隠才蔵 寺田農
 根津甚八 岡本富士太
 筧十蔵 森田健作
 三好清海入道 秋野暢子
 穴山小助 火野正平
 海野六郎 ガッツ石松
 三好伊三入道 真田広之
 望月六郎 野口貴史
 由利鎌之助 岩尾正隆

の面々。アタシのお気に入りの寺田農はイマイチ影が薄い。火野正平演じる穴山小助は素行不良が原因で組織から追い出される。
幸村は戦闘中に左目を失い、柳生十兵衛にクラスチェンジ。
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霧隠才蔵(寺田農)と猿飛佐助(あおい輝彦)。何故か茶髪にソリコミヘアスタイル。


後半、大阪冬の陣あたりから物量に物を言わせた爆発とアクションの連発で面白くなる。
幸村たちは豊臣方に加勢するが、例によって淀君(高峰三枝子)と大野治長(戸浦六宏)の妨害で野戦案の献策は却下・籠城に決定。

真田丸攻防戦は凄い迫力。小助の工作によりシャブ入りの酒を飲んだ前田隊は酩酊状態で真田丸に攻めかかり大被害を出す。
丸太や岩石の他に巨大な火球がゴロゴロ転がるシーンはビックリだ。危ないだろ。
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しかし真田の奮戦も虚しく大阪城は堀を埋められ丸裸状態に。
十勇士たちはいきり立つが幸村は

「幸村の名前は捨てる。ワシもお前たちの仲間に入れてくれ」

と侍大将を自主廃業、自ら鉄砲玉志願。やくざ映画と間違えてないか。
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大阪夏の陣が始まり豊臣は滅亡。ちなみに真田隊は出陣していない。史実と違うぞ。
家康は意気揚々と凱旋するが帰り道に都合よく仕掛けてあった地雷が次々と爆発。戦隊特撮みたいですね。
さらに幸村の扮装をした十勇士たちが出現、徳川の兵はバタバタ倒れていく。
とうとう1人になってしまった家康は荒野をさまようが、ついに幸村と遭遇。首をスパーンとはねられてしまう。
大喜びの幸村も徳川の鉄砲隊の一斉射撃で蜂の巣に。
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佐助は「草の者は死なず」という言葉とともにUFOを召喚、宇宙に帰っていった。完。


いやー、時代劇というよりSF映画というかヒーロー特撮みたいですね。
「柳生一族」みたいな内容を期待した当時の観客は激怒したのではないだろうか。

本作は映画「真田風雲録」の影響が大きいと思う。
アチラはミュージカルコメディだけど。
佐助が超能力者という点も共通している。真田風雲録で佐助を演じた中村(萬屋)錦之介が本作では家康を演じているのは狙ったキャスティングでありましょう。

梅宮辰夫が真田信之役で出演。出番は少ないけど印象に残る。
ナレーターは小松方正が担当。


監督 中島貞夫

松方弘樹/あおい輝彦/萬屋錦之介/寺田農






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